中国訪日観光客急減、日本百貨店業界に打撃

2026/01/27 12:00

中国政府による自国民への日本渡航自粛呼びかけが、2025年秋頃から本格化して以降、日本経済、特にインバウンド消費に依存する小売業界に影を落としている。特に顕著な影響を受けているのは大手百貨店だ。12月に中国から日本への運航予定だった5548便のうち、少なくとも16%に相当する904便以上が運休した。これにより、中国観光客の訪日数が急減し、百貨店の免税売上高が大幅に落ち込んでいる。

中国からの訪日自粛の波及効果

 中国政府からの訪日自粛要請は、日中関係の悪化を背景に、観光やビジネス渡航を抑制するものだ。これにより、中国系航空会社の日本路線が大幅減便され、訪日中国人観光客が激減した。百貨店業界では、中国客は高額消費層として重要で、特にラグジュアリーブランドや化粧品、宝飾品の購買力が大きい。2025年以前は、インバウンド消費が百貨店の成長ドライバーだったが、この自粛により、12月度の免税売上高が軒並み前年比2桁減となった。全体の売上への影響は、インバウンド比率が高い都心部店舗で特に深刻だ。

各社の売上動向と影響分析

 主要百貨店6社(三越伊勢丹、高島屋、大丸松坂屋百貨店、阪急阪神百貨店、松屋、近鉄百貨店)の12月度既存店売上高を概観すると、前年比で増加したのは3社(三越伊勢丹1・9%増、高島屋4・3%増、近鉄百貨店0・3%増)にとどまり、残り3社が減少した。減少の主因は免税売上の低迷で、中国客の減少が直撃している。

 まず、三越伊勢丹ホールディングスは全体売上高が1・9%増と堅調だったが、免税売上高は14・2%減と苦戦。特に銀座店では免税売上が20・1%減少し、館全体の売上も3・0%減となった。一方、伊勢丹新宿本店は免税売上が15・2%減だったものの、国内客売上が7・3%増と健闘し、全体で3・1%増を確保した。同社は「識別顧客」(エムアイカード会員やアプリ会員)の売上がけん引したと説明しており、CRM施策の効果が表れている。宝飾・時計や冬物衣料の好調が国内需要を支え、海外客向けアプリ「MITSUKOSHI ISETAN JAPAN」も登録顧客の売上伸長に寄与した。日本橋本店(5・8%増)など基幹店舗の強みが、影響を最小限に抑えた形だ。分析すると、三越伊勢丹の場合、インバウンド比率が全体の10~20%程度と推定され、減少幅が売上全体に与える影響は相対的に小さいが、銀座のような観光立地店舗では深刻化している。

 高島屋は全体売上高が4・3%増と好調で、4ヶ月連続のプラスを維持した。免税売上高は11・1%減と前年を下回ったが、国内客売上が6・0%増と強く、気温低下による冬物衣料や年末食料品の需要が支えた。店舗別では、大阪店(3・4%増)、京都店(7・5%増)、横浜店(5・7%増)など8店舗が前年超えを果たし、EC店も10・9%増とデジタルシフトの成果が見える。商品別では、特選衣料雑貨や宝飾品、食料品が好調だった。高島屋の強みは、国内客中心の多角化戦略で、インバウンド依存度が低めのため、全体への影響は限定的だ。ただし、中国自粛の長期化で免税売上の回復が遅れれば、利益率の高い高額商品部門に打撃が及ぶ可能性がある。

 大丸松坂屋百貨店は全体売上高が0・9%減と、8月以来の減収となった。免税売上高は16・6%減と大幅減で、客数18・8%減が主因。客単価は2・7%増と高額化が進んだが、訪日客減少を補えなかった。店舗別では、心斎橋店(6・4%減)や梅田店(8・3%減)が厳しく、改装影響も重なった。一方、東京店(0・5%増)や神戸店(4・4%増)など7店舗が前年超えし、外商売上の好調が下支えした。国内客売上は1・7%増と底堅いが、中国客の影響がインバウンド比率の高い関西店舗で顕著だ。分析では、同社の免税売上比率が全体の15%前後とみられ、減少幅が売上全体の1%程度の押し下げ要因となった。休日数減少も加わり、影響が複合的に現れている。

 阪急阪神百貨店は全体売上高が3・9%減と苦戦した。中国客売上が約4割減と最大級の打撃を受け、免税売上全体も前年割れ。関西国際空港の中国便減少が直撃し、阪急本店(6・7%減)では大型改装の売場閉鎖も重なった。国内客売上は前年並みで、気温の高い日が続いたため冬物衣料が鈍化したものの、年末商戦が好調だった。阪神梅田本店は「セサミストリートマーケット」のオープン効果で7・3%増と健闘し、食品売場のリニューアルも寄与した。高額品やブライダルアクセサリー、コンテンポラリーファッションが前年超えした点は明るい材料だ。同社の場合、中国客依存が高く(免税売上比率20%超か)、減少幅が売上全体の3~4%減に直結したと分析される。特に本店のような観光客集客店舗で影響が大きい。

 松屋は全体売上高が10・8%減と最も深刻で、免税売上高が過去最高だった前年比で大幅減。中国自粛が一要因だ。一方、国内客売上は2%増と好調で、婦人衣料品が8%増とけん引した。松屋のインバウンド比率が高いため、全体への影響が顕著で、減少幅が売上全体の10%超の押し下げとなった可能性がある。

近鉄百貨店は全体売上高が0・3%増と微増で、7ヶ月連続前年超え。あべのハルカス本店(1・1%増)でクリスマス・年末商戦が好調、国内客売上が3・1%増した。食料品(クリスマスケーキ2桁増)や婦人服が強みを発揮した。免税売上の詳細は不明だが、中国客減少の影響は限定的で、国内中心の戦略が功を奏している。

全体への影響に関する分析

 定量的に見て、免税売上の減少幅は各社10~40%と大きく、中国客の訪日減少が直接的原因だ。百貨店全体のインバウンド売上比率は平均10~20%程度だが、減少率を考慮すると、売上全体への影響は1~5%減相当と推定される。特に中国客が占める割合が高い(全体訪日客の3~4割)ため、影響は集中している。都心部店舗(銀座、心斎橋、阪急本店)で20%超の免税減が全体売上を3~7%押し下げているケースが多い。

 定性的には、国内客需要の底堅さが救いだ。気温低下による冬物衣料、ホリデーシーズンのギフト・食品需要が活発で、各社国内売上が1~7%増した。CRMやデジタル施策(アプリ、外商)が登録顧客の忠実度を高め、インバウンド減少を補完している。ただし、高額品部門では中国客の不在が痛手で、利益率低下を招いている。

 さらに、2026年初売りデータからも影響の継続がうかがえる。大丸松坂屋(5・3%減)、高島屋(0・7%減)と減少したが、三越伊勢丹(2・2%増)は免税も伸び、国内客がけん引した。中国自粛の長期化で客数減が続けば、業績への打撃は避けられない。

 中国訪日自粛の影響は、百貨店業界に構造的な課題を突きつける。短期的に売上減少は5~10%程度のインパクトだが、長期化すれば回復が遅れ、投資計画に支障を来す可能性がある。対策として、国内客強化(CRM深化、EC拡大)と多角化(東南アジア客誘致)が鍵だ。一方、日中関係改善次第で急速回復も期待できる。業界全体として、インバウンド依存からの脱却が急務だ。

(中国経済新聞)