天津港(Tianjin Port)(証券コード600717)は11月10日夜、資産構成の改善や事業の統合を目指し、全額出資子会社である「物流発展」が天津知財取引センターにて保有している天津中鉄儲運有限公司(以下「中鉄儲運」)の株式60%を譲渡すると発表した。公示価格は2252.43万元で、条件などはすでに公開済みである。
天津港は中国の重要な近代的総合港湾で、荷役、販売、物流、港湾総合付帯サービスなどを手掛けている。2025年1~9月の売上高は93.72億元、上場会社株主帰属の純利益は7.8億元であった。
今回株式を譲渡する中鉄儲運は2004年に設立され、天津港集団の中では中堅規模の会社であり、倉庫保管や輸送、関連サービスを手掛けている。現在の出資元は物流発展と天津開発区聚泰工貿有限公司で、出資率は前者が60%、後者が40%である。
中鉄儲運の決算データを見ると、売上規模の割には利益が少ない状態である。2024年度は売上高が25.48億元で天津港全体の売上高の21.11%を占めたが、利益総額は30.84万元で天津港全体のわずか0.02%であった。2025年9月30日時点の帳簿上の総資産は1.87億元、負債が1.49億元であった。
中鉄儲運は全株主の権益の評価額が3754.05万元で増加率は0.06%と見られており、今回譲渡される60%分の株式は2252.43万元分に相当するが、最終決定価格は取引センターでの確認額となる。

公開された取引手順によると、今回の取引の譲受先は公示方式で募集する。対象となる企業の債権や債務は取引完成後に中鉄儲運が保有および負担し、譲渡金は一括払いでの決済となり、業績に関する制約条項はない。
この取引は天津港の取締役会で採択されており、大規模な資産のリストラは発生しない。取引完了後、物流発展は中鉄儲運の株式を手放し、天津港の連結決算の対象外となり、売上高や利益総額もその分減ることになる。
天津港は今回の株式譲渡について、主力でない事業を分離することで会社の資源における低収益事業の割合を減らすことが主な目的だと表明している。これにより主力である港湾の荷役物流により特化し、運営効率や競争力が向上するほか、エネルギー転換に伴う石炭貿易業界の投資リスクを回避し、経営が一段と強化される。また、回収資金を機器や設備の更新にあてることでキャッシュフローや貸借対照表の中身が改善され、会社の粗利率が約7.57ポイント高まるという。
天津港はコンテナ、鉱石、石炭、原油・精製油、鋼材、コークス、ばら積み自動車、穀物、化学肥料、大型設備などそれぞれのバースがあり、港湾機能としては十分である。またその機能の拡充に努めており、リスク防御力を常に高め、長期的な安定成長を果たすためにサステナブル戦略を維持している。
天津港は、180以上の国・地域で計500以上の港と貿易取引をしており、コンテナ船の運航本数は147本、輸送域面積は中国全土の52%にあたる500万平方キロメートル近くに達している。また天津以外の省、市、自治区の貨物扱い分は、全貨物取扱額の70%前後、輸出入額の50%以上を占めている。中国交通運輸省によると、2025年上半期、天津港の貨物取扱量は中国の全沿海港の中で7位、コンテナ取扱量は同じく6位、輸出入の取扱量は同じく6位となっている。
(発信時点の為替レート1元≒21.77円)
(中国経済新聞)
