中国では、脱炭素化とエネルギー安全保障を両立させる「新型電力システム」の構築が加速している。9月21~23日に中国電力企業連合会(中電連)が主催した「2026新型電力システム発展(崇礼)フォーラム」では、国家電網、中国大唐、中国華能、南方電網などのエネルギー中央企業(中央国有企業)が相次いで今後の重点施策を示した。
国家エネルギー局の何洋副局長は、2030年のカーボンピークまで残り4年となるなか、新型電力システムを軸としてエネルギーのグリーン・低炭素転換を深化させる必要があると指摘した。中長期的にも中国の電力需要は増加傾向が続くとみられ、低炭素かつ自主的な電力供給体制を構築し、エネルギー安全保障の基盤を強化することが求められている。
中国政府は今年6月、国家発展改革委員会と国家エネルギー局が「第15次五カ年計画(2026~2030年)」期の新型電力システム建設計画を共同で発表。2030年までに、「クリーン・低炭素、安全・十分、経済・高効率、需給協調、柔軟・スマート」な新型電力システムを初歩的に構築する目標を掲げている。
国家電網の張智剛董事長は、電力網の形態が従来の「大規模電力網による一方向供給」から、「主網・配電網・マイクログリッドによる双方向の相互作用」へと大きく変化していると説明。これに対応するため、電力網インフラの整備と新型電力網プラットフォームの構築を急ぐ考えを示した。
国家電網は第15次五カ年計画期に固定資産投資として4兆元(約80兆円)を計画しており、2026年の投資額は7,000億元を突破する見通しだという。
また、高比率の再生可能エネルギー電力を送電する大規模送電ルートの整備を進め、特別高圧・超高圧の基幹送電網を強化する。第15次五カ年計画期には高圧直流送電線を15回線以上完成・運転開始し、累計で35回線以上とする目標を掲げ、地域間送電能力を5億kWまで引き上げる方針だ。
再生可能エネルギーの導入が拡大する一方、電力系統の安定性を支える石炭火力発電も当面重要な役割を担う。
中国大唐集団の呂軍董事長によると、石炭火力は発電設備容量では3分の1未満であるにもかかわらず、ピーク時の電力供給の約7割、系統の調整機能の約8割を担っている。第15次五カ年計画期、さらにその先の長期においても、その役割を完全に代替することは難しいとの認識を示した。
一方、石炭価格の大幅な変動によって石炭火力発電企業の経営環境は厳しくなっている。呂氏は、石炭と石炭火力発電の需給協調メカニズムや電力価格制度をさらに整備し、石炭火力企業の持続的な経営能力を高める必要があると指摘した。
中国華能集団の白勇董事長は、中国のエネルギー・電力産業が「量の拡大」から「質的向上」へ移行する重要な局面にあると分析。新型電力システムの建設が加速する一方、電力需要構造と系統安定性、新エネルギーの消納と転換コスト、価値の伝達と制度間の協調という複数の課題に直面していると述べた。
特に、人工知能(AI)やデータセンターなどの新たな電力需要が拡大することで、電力システムにはより高度な予測・制御・協調能力が求められている。
白氏は、系統形成型(グリッドフォーミング型)再生可能エネルギー、長時間蓄電、高度な電力設備、電気・エネルギー協調、先進原子力などの中核技術の開発を加速するとともに、「AI+エネルギー」の取り組みを進めることを提案。スマート給電、系統状態のリアルタイム把握、協調制御などを通じて、電力需給のリアルタイムバランスとリスク管理能力を高める考えを示した。
AIの急速な普及に伴い、中国ではコンピューティング能力(算力)と電力の連携も重要な政策課題となっている。
「算電協同」は今年の政府活動報告に初めて盛り込まれた。中電連の楊昆常務副理事長によると、2025年の中国のデータセンターなど算力センターの総電力消費量は1,700億kWhに達し、算力規模は世界第2位となった。全国8大算力ハブノードの算力規模は、過去3年間で年平均40%のペースで拡大している。
ただし、算力と電力を効率的に連携させる仕組みはなお十分に整っておらず、一部の重要な利用シーンでは再現可能な成熟したソリューションが確立されていないという。
南方電網の季明斌総経理は、同社が国家人工知能応用中試基地や国家新型電力システム品質検査センターの建設を主導していることを紹介した。また、「電力・炭素・算力」の協調運用プラットフォームを構築し、「多ステーション一体化」などの実証事業を進めている。
第15次五カ年計画期には、電力網と水網、算力網、次世代通信網、地下都市インフラ網、物流網などとの連携をさらに強化。「電力・炭素・算力」の協調、電気自動車と電力網を連携させる「V2G(Vehicle-to-Grid)」、多ステーション一体化など、新たな融合モデルを拡大する方針だ。
今回のフォーラムでは、中電連が「全国算力センター電力消費指数」を初めて発表した。これは算力インフラの電力消費の伸びを専門的に定量化する指数で、デジタル経済や算力インフラの急速な発展に伴う電力消費の変化を把握するための指標となる。
同指数は、算力インフラの省エネルギー・脱炭素化や電力資源の最適配分、算力と電力の協調的発展に向けた政策判断の基礎データとして活用されることが期待されている。
このほか、フォーラムでは「中国電化発展年次報告2026」、電力製品のカーボンフットプリント管理体系の構築成果、2026年のゼロカーボン工業団地認証成果なども公表された。
中国の電化も引き続き進展している。最新データによると、2025年の中国の電化率は約29.5%となり、前年から1.4ポイント上昇した。
中電連の楊昆氏は、第15次五カ年計画期間中、工業、農業、農村住民生活分野では電化が安定して進み、建築・交通分野では電化がさらに加速すると予測。これにより、全国の電化率は2030年に35%に達するとの見通しを示した。
新型電力システムの構築は、単に再生可能エネルギーを増やすだけではなく、送電網、石炭火力、蓄電、AI、算力、交通などを含むエネルギーシステム全体を再構築する段階に入っている。中国では第15次五カ年計画を軸に、「再エネ拡大」と「系統安定性」、「電力インフラ投資」と「デジタル化」、「脱炭素」と「エネルギー安全保障」を同時に進める取り組みが本格化している。
(中国経済新聞)
