歌手の三浦祐太朗さんが11月2日夜、上海で、初めての海外公演を行った。北京、大連、成都、桂林、そして日本から駆け付けたファンが花やプレゼントを抱えて会場へと足を運んだ。
三浦祐太朗さんが、1980年代の中国で恋愛観や国際観について強い印象を残した映画スターで歌手の山口百恵さんと、三浦友和さんの息子だからである。それから40年、中国のファンたちはこうした気持ちを母親からその子供へと注ぐようになった。
よって中国のファンからすれば、「三浦祐太朗さんのライブ」と言うよりむしろ、「山口百恵さんの息子のライブを見に来た」といったような感覚である。
祐太朗さんは幼少のころから音楽が好きで、中学時代に仲間たちとバンド「Peaky SALT」を結成し、大学時代には1枚目のシングルをリリースしている。
祐太朗さんはバンドの活動資金を稼ぐために中学生の家庭教師をしたり、水泳やスキーのコーチをしたりした。山口百恵さんの息子であることはもちろん誰も知らなかった。
祐太朗さんは、大学は法学部であったが卒業後は就職せず芸能界に進んだ。進路については両親も十分に理解し、応援してくれた。2017年には母親のヒット曲を歌ったアルバム「I’m HOME」をリリース、わずか2か月で売上枚数は7万枚を突破し、第59回日本レコード大賞企画賞を受賞した。
この年に私は、京都の音楽ホールで行われた「魅力上海の夜」で、初めて祐太朗さんの歌声を聴いた。テレビドラマ「赤い疑惑」主題歌であった山口百恵さんの曲「ありがとう あなた」を聞き終わった時に、祐太朗さんを中国公演に招待しようと考えついた。
上海星在文化伝播の朱寅社長がこの願いをかなえてくれて、今年の上海国際芸術祭で「三浦祐太朗2024年上海ライブ」を目玉のプログラムとして盛り込んだ。
祐太朗さんにとって、人生初の海外公演を中国としたことは特別な意味がある。本人曰く、「上海で公演をした今日、母親の曲を歌い継ぐことの意味を十分にかみしめた」とのことである。
「今回、公演前にお母さんからどんなことを言われたか」と尋ねてみた。
祐太朗さんは、「『みんなの期待を裏切らないようにしっかり歌ってね』と言われた」と答えた。
今回のライブは中休みもなく、山口百恵さんの名曲「ありがとう あなた」、「横須賀ストーリー」、「秋桜」、さらにファイナルコンサートで最後に歌った「さよならの向う側」など、計18曲を一気に歌い上げた。中国でもよく知られているこれらの曲に、訪れたファンも酔いしれてしまった。祐太朗さんはステージで日本語で歌い、観客席では多くの人が中国語で口ずさんでいた。中日両国の大合唱で、2つの時代の友情と夢が刻まれたのである。
祐太朗さんの歌声は、2017年に初めて聞いた時よりもずっしりとして透き通っていた。自作の曲も随分披露して、音楽の道をかなり究めているという印象を受けた。
祐太朗さんは今回のステージで、谷村新司さんが作詞作曲した「いい日旅立ち」も歌った。谷村新司さんについては、「大好きだった。小さい時から可愛がってくれて、素晴らしいミュージシャンだった。残念ながら去年お亡くなりになったけれど、私の心の中では今も生きている。谷村さんのように日中友好の架け橋になって、歌で友情の橋を築きたい」と語っている。
三浦祐太朗さんの上海公演は、その友情の橋のかけ始めである。中日両国は代々受け継ぐ友好の使者が必要なのだ。
(中国経済新聞)