中国広西チワン族自治区の電力販売業界で、深刻な経営危機が広がっている。中国中央企業(央企)傘下の電力販売会社9社は2026年9月30日、電力市場のシステミックリスクを防ぐため、緊急対策を求める共同文書を提出した。業界の累計赤字は2026年1~8月に20億元(約420億円)を超え、年間損失は50億元(約1,050億円)を上回る可能性があるという。
第一財経の調査によると、9月単月の赤字も10億元(約210億円)を超える見通しだ。大手電力販売会社の中には、年間損失が1社で10億元(約210億円)を超えるケースもあるとされる。
卸売価格の高騰と小売価格の下落が直撃
今回の危機の主因は、電力の卸売価格と小売価格の逆転だ。
共同文書によると、2026年に入り、国際的な地政学情勢の急変などを背景に、石炭や石油、天然ガスといった一次エネルギーの価格が上昇。発電コストの増加を受け、広西の電力スポット市場価格も上昇した。
電力スポット市場の前日市場平均価格は、4月に1キロワット時(kWh)当たり0.368元(約7.73円)に達し、9月には0.395元(約8.30円)まで上昇した。
さらに、2026年10~12月には、広西地域の送電網の改修・増強工事に加え、原子力発電所や石炭火力発電所の大規模な定期検査・停止が予定されている。文書は、これらの要因によってスポット価格が一段と上昇し、1kWh当たり0.5元(約10.50円)を突破する可能性があると警告している。
一方、小売価格は下落傾向にある。広西では近年、需要家向けの電力販売価格が段階的に引き下げられてきた。スポット市場の運用期間が短く、市場の成熟度も十分ではなかったことから、2026年の市場ではスポット価格が低水準で推移するとの見方が広がり、固定価格による小売契約が主流となった。
その結果、電力販売会社の小売契約価格は平均約0.260元(約5.46円)にとどまった。ところが、電力の需給環境が変化し、卸売価格が急騰しても小売価格に十分転嫁できず、両者の価格差が逆転。電力販売会社は、卸売市場で調達した電力を需要家に販売するたびに損失を抱える状況に陥っている。
文書によれば、1kWh当たりの最大損失は0.373元(約7.83円)を超え、一部の大手企業では月間損失が1億3,000万元(約27億3,000万円)を超えた。
業界関係者は、エネルギー価格の急変だけでなく、これまでの過度な低価格競争も危機を拡大させたと指摘する。
電力販売会社の基本的な収益モデルは、卸売市場で安く電力を調達し、工業・商業向けの需要家に販売することで価格差を確保する仕組みだ。しかし、需要家を獲得するために低価格で契約を結んでいた企業は、調達コストが急上昇しても販売価格を引き上げられず、損失を吸収せざるを得なくなった。
とりわけ、固定価格契約の比率が高い企業では、卸売価格の変動リスクを十分に転嫁できない。価格が安定していた時期には競争力につながった契約条件が、相場の急変によって経営を圧迫する要因となっている。
9社が求める4つの緊急対策
共同文書に署名したのは、広西国能総合能源服務、広西国開能源販売、華潤電力(広西)販売、広西大唐桂冠電力マーケティング、華能広西能源販売、広西中広核合同能源管理、中電広西防城港能源、広西華電総合能源服務、広西国電投博能售電の9社。いずれも中央企業系の電力販売事業者だ。
各社は、現在の厳しい状況に有効な介入がなければ、2026年第4四半期に広西の電力販売業界で大規模な経営破綻や市場からの退出が発生する恐れがあるとして、次の4項目を要請した。
1.9月分の電気料金精算を一時延期すること。 企業の資金繰り悪化を抑え、短期的な経営破綻を回避する。
2.卸売価格と小売価格の連動・転嫁メカニズムを導入すること。 調達コストの上昇を販売価格に適切に反映できるようにする。
3.年間契約における制度上の電力量の精算ルールを適用すること。 年間取引計画に基づく精算の仕組みを活用し、損失の拡大を抑える。
4.小売契約の解約を秩序立って進めること。 価格条件が維持できなくなった契約について、混乱を抑えながら見直しを可能にする。
これらの措置は、資金繰りへの緊急対応に加え、電力調達コストの変動を販売価格へ反映できる市場制度への修正を求めるものといえる。
広東でも約6割の電力販売会社が赤字
広西の問題は、地域特有の現象にとどまらない。第一財経の調査によると、広東省でも2026年上半期に電力販売会社の広範な赤字が発生した。広東電力取引センターの「2026年広東電力市場半年報」によると、1~6月に累計黒字を確保した電力販売会社は202社だったのに対し、累計赤字となった会社は298社に上った。赤字企業の割合は59.6%と、約6割に達した。
広東の業界関係者によれば、2月以降、国際的な地政学的緊張を背景に石炭や天然ガスの調達コストが上昇し、火力発電のコストが増加した。さらに、輸出向け受注の回復による電力需要の増加、再生可能エネルギーの発電量の変動、発電設備の集中検査などが重なり、スポット市場価格が大幅に上昇した。
3~7月には現物市場の電力価格が高水準で推移し、広東でも卸売価格と小売価格の逆転が発生。多くの電力販売会社が連続して赤字を計上したという。
電力販売会社は、中国が2015年に開始した電力体制改革の一環として拡大してきた。国家能源局によると、2025年末時点で全国の登録電力販売会社は5,000社を超え、実際に事業を行っている企業は約3,000社に達した。2025年の電力販売会社による需要家向け仲介取引量は約4兆kWhで、全国の市場取引電力量の約6割を占める。
広西では、発電事業者系、電力網関連、独立系の市場参加者が電力販売を担っている。こうした企業は、電力市場の自由化と競争を支える役割を果たしてきた。
しかし、今回のように卸売価格が急騰する一方で小売価格が固定されている場合、価格変動リスクが販売会社に集中する。赤字が長期化すれば、企業の撤退だけでなく、需要家との契約や電力料金の精算、電力市場全体の安定運営にも影響が及ぶ可能性がある。
(中国経済新聞)
