「『展示』から『投資』へ――進博会が映す、世界企業の中国戦略の変化」

2026/10/6 11:00

第9回中国国際輸入博覧会(輸入博、CIIE)が11月5日、上海国家会展中心で開幕する。現時点で、99の国・地域から1200社を超える企業が出展契約を結び、契約済みの展示面積は34万平方メートルを超えた。世界500強企業や各業界のリーディング企業は265社に達している。

これに加え、第10回輸入博の出展企業募集もすでに始まっている。ロシュ、サムスン、ロレアル、ペルノ・リカールなど30社以上が早くも「10年連続出展」を決め、輸入博への長期的なコミットメントを示している。

輸入博はこれまで、世界最先端の技術や製品が集まる「ショーケース」としての役割を果たしてきた。第1~8回では、代表的な初公開・初展示の新製品、新技術、新サービスが累計3400件以上披露された。今回も多数の革新的な製品や技術が中国市場で初めて公開される予定で、すでにその一部が明らかになっている。

アストラゼネカ中国の林驍総経理は、輸入博について「中国の高水準な対外開放を象徴する『ゴールドブランド』であると同時に、世界のイノベーションと中国の機会が双方向に結び付く重要なプラットフォーム」と評価する。

9年連続出展となる同社は、今年約1000平方メートルの展示ブースを設け、3つの先端的な革新治療法を初公開する。そのうち、高血圧治療向けの革新的医薬品は中国で初めて披露され、「輸入博新製品」にも選出される予定だ。

この医薬品は2026年5月に米国で承認され、成人高血圧症の治療を目的とするアルドステロン合成酵素阻害薬として、世界で初めて、かつ現時点で唯一承認された薬剤となっている。

一方、ベーリンガーインゲルハイムも今年、14の先端的な成果を展示する。医療用医薬品分野では、心腎代謝疾患、呼吸器疾患、がんなどを対象とした革新的な製品群を紹介する。

同社の重点研究開発パイプラインの一つである、グルカゴン/GLP-1デュアル受容体作動薬「ソーフェルデュチド」は、米食品医薬品局(FDA)と中国国家薬品監督管理局(NMPA)医薬品評価センター(CDE)からブレークスルーセラピー指定を受けたほか、欧州医薬品庁(EMA)からも優先医薬品指定を受けている。今年はこのほか、世界の研究開発の最前線にある3つの潜在的治療法も中国で初披露される。

農業・食品関連分野でも新製品が登場する。ルイ・ドレフュス・カンパニーの動物栄養・特殊原料事業部門は、上海のグローバル研究開発センターで独自開発した革新的な動物栄養製品を展示する。

その一つである多機能油状乳化剤は世界初公開となる。また、「易富康(ペプチド・脂質結合タンパク質)」は独自の製法によってタンパク質と脂肪の双方の高い消化性を実現した次世代型の革新的製品だ。

ヘンケルは、世界各地の先端技術や革新的製品、サステナブルなソリューションを一挙に紹介する。人工知能(AI)、新エネルギー車、データセンター、人型ロボット、スマート端末などに加え、低炭素材料、グリーン製造、包装の循環利用など、中国の産業や消費市場との結び付きが強い分野に焦点を当てる。美容・ヘアケアやホームケア分野の新製品も披露する予定だ。

輸入博の存在感が高まる中、会場で披露された革新的な製品や技術が、その後、中国市場で実際の事業へと発展するケースも増えている。

アストラゼネカは過去8年間で、20製品の革新的医薬品を「輸入博ベビー」として初公開してきた。2025年に輸入博で初披露した乳がん治療薬は、展示会終了からわずか8カ月で、中国での承認、商業販売、医療保険への収載という「3段階」を実現した。

ベーリンガーインゲルハイムも8年連続で輸入博に参加し、これまでに約50件の革新的な製品・ソリューションを展示してきた。2025年以降、中国では3つの新薬と5つの適応症が承認され、一部製品では世界同時承認、さらには世界初の発売も実現している。

つまり、輸入博は単なる製品展示の場ではなく、海外企業が中国市場での事業展開を加速させる「触媒」としての役割を強めている。

外資企業にとって輸入博は、世界の最新技術を中国に紹介する場であると同時に、中国での研究開発やイノベーション投資を深める契機にもなっている。

世界で150年、中国で55年の事業実績を持つヘンケルは、今年で8回目の輸入博参加となる。同社はAI、スマート製造、グリーン・低炭素化への移行が中国市場に大きな機会をもたらしているとみており、輸入博を「世界の先進的なイノベーションとサステナブル・ソリューションを中国市場の実際のニーズにつなぐ橋」と位置付けている。

今年9月には、中国の電池メーカー、中創新航(CALB)と戦略協力に関する覚書を締結し、共同で電池イノベーションセンターを開設した。

同じ9月には、約5億元を投じた上海の接着剤技術イノベーション体験センターが開設1周年を迎えた。ここにはすでに500人を超える科学者や技術専門家が集まっている。

さらに8月には、ヘンケル上海包装リサイクル評価・試験センターが、中国で初めてEUの紙包装リサイクル性能試験を実施し、それに対応する評価報告書を外部に発行できる資格を取得した。中国およびアジア太平洋地域の顧客に対し、EU基準に準拠した現地での試験・評価サービスを提供する。

ベーリンガーインゲルハイムも8月、中国戦略をさらに強化すると発表した。医療用医薬品と動物用医薬品の研究開発、生産、商業化への投資を拡大する方針で、上海・張江には新たな研究開発センターを設立する。

新センターは、中国国内での早期臨床開発能力を高めるとともに、外部とのイノベーション協力を強化する役割を担う。2030年までに、医療用医薬品事業で約20件の承認取得、動物用医薬品事業では経済動物と伴侶動物の主要品種を対象に、約10件の新製品または新適応症の承認取得を目指す。

こうした動きは、外資企業の中国における投資モデルそのものが変化していることを示している。

PwC中国の周星副会長は、外資企業の中国投資について、従来の工場建設を中心とした固定資産投資から、研究開発センターやイノベーションセンターの設立へと重点が移りつつあると指摘する。こうした投資は付加価値がより高く、中国の現地イノベーション体系との融合も深い。

いわゆる「スマイルカーブ」では、製造が中央に位置し、その両端に研究開発と販売・マーケティングが位置する。近年、中国に進出する外資企業は、このスマイルカーブの両端、すなわち研究開発と販売の領域へと事業を広げつつある。

中国商務部のデータによると、2026年1~8月に全国で新たに設立された外資系企業は4万2582社で、前年同期比0.3%増加した。一方、実際に使用された外資額は4799億5000万元で、前年同期比5.3%減少した。

ただし、ハイテク産業への外資投資は力強い伸びを示している。同期間のハイテク産業における実行ベースの外資利用額は2002億6000万元で、前年同期比35.1%増加。全国の実行ベース外資利用額に占める割合も41.7%に上昇し、前年同期から12.4ポイント拡大した。

分野別では、研究開発・設計サービスへの外資利用額が前年同期比74%増、科学技術成果の実用化サービスが64.2%増、電子・通信設備製造業が41.9%増となった。

輸入博、中国市場への「入り口」から世界イノベーションの接続点へ。第9回輸入博を前に、世界の主要企業が相次いで新製品や先端技術を中国に持ち込む一方、中国での研究開発、イノベーション、人材、サプライチェーンへの投資も加速している。

輸入博の価値は、単に海外の製品を中国市場に紹介することだけではない。世界で生まれた新しい技術や製品が中国の産業・消費市場と結び付き、さらに中国で研究開発や事業化が進み、世界市場へと還流していく――。そうした双方向のイノベーション・サイクルを生み出すプラットフォームへと、その役割を広げつつある。

今回の輸入博で披露される「世界初」「中国初」の新製品が、今後どのように中国市場に定着し、新たな投資や産業連携につながっていくのか。世界企業にとって、輸入博は「展示会」から「中国における次の成長戦略を描く場」へと進化しつつある。

(中国経済新聞)