中国、国産EUV光源システムの試作機を初公開 国産化率90%を達成

2026/10/15 15:30

中国の朗道燧岩(上海)科技有限公司(以下、朗道燧岩英語名 Langdao Silex)は、2026年10月14日、上海で開催された第26回中国国際工業博覧会で、極端紫外線(EUV)光源システムの試作機を初公開した。現地の関係者によると、同システムの国産化率は90%に達し、主要部品の大半を独自開発したという。中国国内で開発が進むEUV光源技術の現状を示す成果として注目される一方、商用化に向けては出力の向上や長時間運転時の安定性など、解決すべき課題も残されている。

EUV光源は、先端半導体の製造に不可欠なEUV露光装置を構成する中核部品の一つである。7nm以下の先端プロセスでは、EUV露光技術が重要な役割を担っている。中国にとって、海外企業が技術面で先行するEUV露光装置とその主要部品の国産化は、半導体製造技術の自立を進めるうえで重要な課題となっている。

今回、朗道燧岩が公開した試作機は、同社の説明によると、国産化率が90%に達する。光源には、海外の主要メーカーと同じレーザー生成プラズマ(LPP)方式を採用しており、チップの露光試験に使用できるとしている。

ただし、今回の公開は光源技術の実現可能性を示すものであり、商用EUV露光装置への搭載や量産現場での実用化が実証されたことを意味するものではない。

同社が公式サイトで公表した技術情報によると、低出力EUV光源システム「FlintNano LPP-OXXO」の主な仕様は以下の通りである。

駆動レーザー出力:1,000W、レーザー繰り返し周波数:1~20kHz、変換効率:2%超、輝度:100W/mm²sr、EUV出力:15W超、連続運転時間:100時間超、プラズマサイズ:60μm、プラズマ安定性:3% RMS、エネルギー安定性:5%

同社によると、低出力の「FlintNano-LPP」シリーズは製品化に向けた段階に入っている。一方、高出力の「FlintMicro-LPP」シリーズについては、原理実証を終えた段階だという。

これらは同社が公表した仕様値であり、量産環境での稼働率や保守周期、長期的な出力安定性などについては、今後の検証が必要となる。

清華大学の研究成果を基盤に設立された新興企業

朗道燧岩は2024年に設立された。創業者の王豪博士が率いるチームは、清華大学の気体放電プラズマ研究室で培われた研究成果を基盤に、LPP方式のEUV光源技術を開発している。

同社の主力事業は、半導体リソグラフィー向けの高出力LPP-EUV光源の研究開発、製造、販売である。EUV光源は、最先端半導体の製造に加え、フォトレジストやマスクの検査装置など、EUV関連技術のエコシステムを支えるうえでも重要な役割を担う。

資金調達では、2025年10月に張江高科傘下の燧玥創投からエンジェルラウンドの出資を受け、累計調達額は1,000万元を超えた。その後、2026年1月にエンジェルプラスラウンド、同年7月にはAラウンドの資金調達を完了したという。投資家には、沃衍資本や中芯聚源などの産業関連投資会社が名を連ねている。

同社は現在、「燧岩」「輝光」「天算」の3つの事業を展開している。「燧岩」はEUV光源システム、「輝光」は大出力CO₂軸流高速レーザー、「天算」はプラズマシミュレーションソフトウエアをそれぞれ手がける。

同社がCO₂レーザーとプラズマシミュレーションを独立した事業として開発しているのは、将来的なEUV光源の高出力化や安定性の向上に必要な基盤技術を確立する狙いがある。

同社は採用情報の中で、開発中の高出力短パルスCO₂レーザーとプラズマ産業シミュレーションソフトウエアについて、いずれも将来の高出力・高安定性・長寿命のLPP-EUV光源を実現するうえで重要な技術になるとの見方を示している。

今回の試作機公開は、中国のEUV光源開発における一つの節目となる。ただし、量産化までにはなお時間がかかる見通しだ。現地の関係者は、量産化までに3~5年を要するとの見方を示しており、主な課題として出力の向上と長時間運転時の安定性を挙げている。

商用EUV露光装置では、数百ワット級の光源出力に加え、長時間にわたって安定稼働できる高い信頼性が求められる。先行するASMLは、2018年に250W級のEUV光源システムを投入し、その後、量産現場への導入を進めてきた。現在は、さらなる高出力化にも取り組んでいる。

これに対し、朗道燧岩が今回公開した試作機のEUV出力は15W超にとどまる。同社が商用システムに求められる数百ワット級の出力を実現するには、なお大きな技術的課題が残されている。

必要なのは、単に出力を引き上げることだけではない。プラズマの安定性を高めるとともに、集光ミラーなどの光学部品の長寿命化や、システム全体の信頼性向上を同時に進める必要がある。

LPP方式のEUV光源では、主に以下の技術が重要となる。

高出力CO₂駆動レーザー: 安定したレーザー出力を維持し、効率的にプラズマを生成する技術。

スズ液滴供給システム: 液滴の位置や大きさ、レーザー照射のタイミングを精密に制御する技術。

集光ミラー: スズによる汚染や熱などの影響を抑え、反射性能と耐久性を確保する技術。

長期運転の信頼性: 出力変動を抑え、保守頻度を低減しながら安定稼働を維持する技術。

同社がCO₂レーザーとプラズマシミュレーションを独立した事業領域として開発しているのも、こうした技術的な課題を解決するための取り組みと位置付けられる。中国にとって、EUV光源の国産化は、先端半導体製造の自立性を高めるうえで重要な意味を持つ。

(中国経済新聞)