欧州で売れる中国・慈溪製ヒーター

2026/09/30 15:30

中国・浙江省の慈溪市で、暖房器具メーカーが異例の忙しさを見せている。例年ならこの時期には生産のピークを越え、シーズンに向けた出荷も一段落する。しかし今年は、複数の工場で生産ラインがフル稼働。従業員が残業して生産を急ぐ中、ドイツやフランス、スペインなど欧州から追加注文が相次いでいる。

欧州の天然ガス価格の変動などを背景に暖房器具への需要が高まり、中国の暖房器具産業に「追加発注」の波が押し寄せている。

慈溪市にある暖房器具メーカーでは、11本の生産ラインがフル稼働し、260人余りの従業員が省エネ・静音タイプのヒーターの生産に追われている。

同社によると、ドイツ向けには今年上半期に50万台余りを受注し、すでにすべて出荷した。ところが8月に入ると、ドイツの取引先から追加注文が入った。中でもドイツのあるスーパーからは、12万台の追加発注を受けたという。フランスやスペインからも、相次いで追加注文が寄せられている。

別のメーカーでは、スペイン向けの新型オイルヒーター1万台を生産している。この注文は8月末に追加されたもので、10月上旬の出荷を予定している。

この製品は、放熱部分に管状の部品を加えて空気の対流を促す新しい構造を採用し、暖房効率を高めた。スペインでの販売価格は240ユーロ。すでに7万台が売れており、現在も26万台の受注残を抱えている。

同社の今年1~8月の輸出額は6500万元に上り、前年同期比で42%増えた。

欧州向け輸出は12.5%増——慈溪市は、中国有数の暖房器具の生産拠点だ。市内には100社を超える暖房器具メーカーが集まり、中国全体の暖房器具輸出の約3割を占めるとされる。

今年1~8月の慈溪市の暖房器具輸出額は25億5000万元で、前年同期比9.9%増加した。このうち欧州向けは16億元で、前年同期比12.5%増となっている。好調な輸出を支えているのが、海外市場のニーズを取り込んだ製品開発だ。

欧州のニーズを取り込む「慈溪製」——慈溪市の家電メーカーでは、欧州の顧客から寄せられる要望をもとに、新製品の開発を進めている。あるメーカーが今年発売した冷暖房・空気清浄機は、暖房、冷房、空気清浄、間接照明を一台にまとめた多機能製品だ。価格は100ユーロ台で、発売から半年余りで5万台以上を販売した。

別のメーカーでは、発売から1年足らずの省エネ・静音ヒーターが50万台以上売れている。一般的なヒーターの運転音は約50デシベルだが、この製品は設計を見直し、約35デシベルまで抑えたという。

同社は今年だけで62種類の新製品を開発した。空気の流れを改善する風道の設計や、外装の振動を抑える構造、ファンを1基から2基に増やす改良など、細かな部分まで顧客の声を反映している。

強みは「すぐ作れる」産業集積——慈溪のメーカーが海外の注文に素早く対応できる背景には、長年かけて築いてきた産業集積がある。金型設計から射出成形、塗装、主要部品、包装まで、家電製品の製造に必要な関連企業が地域内に集まっている。必要な部品を地元で調達できるため、顧客から新たな要望が出れば、製品に素早く反映できる。

あるメーカーの責任者は、顧客から要望があれば「ファストフード店のように、すぐに商品を出せる」と話す。欧州から相次ぐ追加注文の背景には、こうした充実したサプライチェーンに加え、海外顧客のニーズを細かく拾い上げ、製品開発につなげる対応力がある。

欧州の暖房需要を追い風に、中国・慈溪の暖房器具メーカーは生産と輸出を伸ばしている。海外市場の変化を素早く捉え、それを製品改良や追加注文につなげる生産体制が、欧州市場での存在感を高めている。

(中国経済新聞)