10月12日から16日まで、上海で第26回中国国際工業博覧会(以下、工博会)が開催された。会場には、初公開・初出展となる約300点の製品に加え、「極大・極小・極軽・極精・極智」を特徴とする約400点の製品が集結。多彩なロボットやスマート生産ライン、産業向けAIシステムなどが披露され、製造業が単に「機械を造る」「製品を作る」段階から、自ら考え、現場の状況を理解して行動する段階へと進化している姿が浮き彫りになった。
今回の工博会では、初公開の製品や先端技術、将来の産業の姿を示す展示が相次いだ。独創的な技術革新から、実用化・量産化に向けた取り組みまで幅広く紹介され、イノベーション、産業、資金、人材の各分野が結び付く場となった。
協働ロボットメーカーの節卡(JAKA)ロボットのブースでは、世界初公開となる2種類のロボットが来場者の注目を集めた。

その一つである「JAKA Kargo」は、車輪型の人型ロボットで、総合的な知能化レベルはL4に達する。7軸のロボットアームを2本搭載し、繰り返し位置決め精度は±0.05ミリメートル。対象物の認識から、把持位置の選択、障害物の回避、柔軟な把持、力制御による取り出し、位置合わせ、配置、自己検査まで、一連の作業を人手による介入なしで自律的に実行できる。
JAKAロボットのソリューション責任者、李志鵬氏によると、こうした作業能力は実際の生産ラインで検証済みだという。大手自動車部品メーカーの自動車用ヘッドライト工場では、現場での継続的な改善を通じて、1箱当たりの作業時間を導入当初の105秒から28秒へ短縮した。また、新たな作業環境への導入期間も12カ月から57日へと短縮した。
工博会では、現在の産業技術の到達点だけでなく、将来の発展の方向性も示された。会場に展示された約400点の「五極」製品は、微細加工の精密さや機械の認知能力など、新たな技術の可能性を提示した。
上海柴孚ロボットが展示した超重量物対応ロボットは、ピックアップトラックを持ち上げながら、針に糸を通すような繊細な作業も繰り返し実行できる。大きな荷重を扱う力強さと、微細な動作を実現する精密さを兼ね備えた技術だ。
一方、デルタグループが披露した高効率産業用電源「DIN Pro」シリーズは、軽量化や省スペース化を追求した製品で、最軽量モデルはわずか0.5キログラム。制御盤や自動化設備の内部など、設置スペースが限られた環境での活用を想定している。
大型・高出力の設備から小型・高精度の機器まで、こうした技術は製造現場の柔軟性と効率性を高める基盤となる。
今回の工博会で中心的なテーマとなったのが、スマート製造の高度化だ。開幕式では、上海市が新世代スマート製造の発展を加速させるための行動計画を始動し、新たなスマート製造体系の構築を目指す方針を打ち出した。
初出展となった海智智造は、「魔砺工場」「智能体工作台」「陣列工場」の3製品を紹介した。
このうち「魔砺工場」は、AIを活用してユーザーのアイデアを具体化し、製品の外観や構造の設計案を生成するプラットフォームだ。ソフトウエア・ハードウエアの開発、エンジニア、製造リソースをつなぎ、コンセプト設計から試作品の検証、製品の改良までを支援する。
同社の創業者兼董事長(会長に相当)の佘瑩氏は、AIは数秒で応答できる一方、「製造には長い道のりがある」と指摘する。
図面一枚を実際の製品にするためには、材料、寸法、公差、組み立て関係、工程設計、生産コストなど、幅広い専門知識が必要となる。同社は、アイデアから試作品へ、さらに製品へと至るプロセス全体の短縮を目指し、11年間にわたって1000万枚を超える設計図面と大量の実際の製造データを蓄積してきた。
製造現場では、設計や工程の一部を自動化するだけでなく、受注から納品までのプロセス全体を連携させることも重要になっている。
産業向けソフトウエアを手掛ける黒湖科技の創業者兼CEO、周宇翔氏は、AIエージェントの発展によって、産業知識や生産現場の経験を個人の能力だけに依存せず、システムに蓄積し、より迅速に共有・活用できるようになると説明する。
工場で注文を受けると、図面の解析、工程設計、見積もり、生産計画、製造、品質管理、納品など、多くの工程を経る。前工程の判断が変われば、後工程の計画もそれに合わせて調整しなければならない。
こうした課題に対応するため、同社は見積もり、エンジニアリング、生産計画、受注進捗管理などをカバーする10種類以上の意思決定支援型AIエージェントを展示した。
これらのエージェントは個別に動作するのではなく、同じ注文に関する情報や判断を共有する。例えば、工程設計で得られた判断を見積もりや生産計画に反映し、注文内容や生産条件が変われば、後続の工程も連動して調整できる。
同社が目指すのは、生産現場を理解し、変化に対応しながら意思決定を支援する「産業AIの頭脳」だ。AIを個別作業の効率化にとどめず、生産システム全体の最適化に活用する方向性が鮮明になった。
中国工程院の周済院士は、人工知能と製造技術の融合について、AIなどのスマート技術は製造業を強化する「支援技術」であり、製造技術そのものが産業の基盤となる技術だと指摘する。
製造業のイノベーションは、新製品の開発や生産技術の革新だけではない。産業モデルの革新や、製造システムの統合・革新も含まれる。新世代スマート製造は、これらの各分野で役割を果たし、製造業全体の革新と最適化を推進する必要があるという。
この考え方は、AIの導入が製造業にとって単なるデジタル化や省人化ではなく、設計、生産、管理、事業モデルまでを含めた総合的な変革であることを示している。
今回の工博会には、24の国・地域から3200社を超える企業が出展した。海外企業および外資系企業の出展面積は前回に比べて12%増加し、海外の専門来場者の登録者数も前年同期比で90%増加した。
ドイツのシーメンスのブースでは、20種類を超える新製品が発表され、そのうち13種類は中国国内で開発された製品だった。
シーメンス大中華区総裁の肖松氏は、中国について「世界で最も重要な工業市場の一つであるだけでなく、将来の産業AIにとって重要な応用の場でもある」と述べた。
同社は今後、グローバルな技術力、中国のイノベーション、中国市場での迅速な実装力を組み合わせ、中国の現場で生まれ、市場で検証された成果を世界市場へ展開していく考えだ。
今回の工博会が示したのは、製造業の競争力を左右する要素が、機械の性能や製品の品質だけではなくなりつつあるという現実だ。AIが製造現場の知識を取り込み、複雑な工程を理解し、変化に応じて判断できるようになれば、設計から生産、品質管理、納品までの一連のプロセスは新たな段階へと進む。
「機械を造る」ことから「現場を理解する」ことへ。AIと製造技術の融合は、中国の製造業に新たな可能性をもたらすとともに、世界のスマート製造の発展にも影響を与えそうだ。
(中国経済新聞)
