上半期の自動車産業チェーンの収益力:駆動用バッテリーとリチウム資源

2022/09/6 15:00

今年上半期、中国の自動車産業は、繰り返される新型コロナウイルスの流行と複雑な国際情勢の中で、供給ショック、需要の縮小、期待の低下という三重苦に直面し、全体の売上高は前年同期比6.6%減となった。しかし、新エネルギー車は引き続き好調で、生産、販売とも前年同期比1.2倍となった。

大手上場自動車メーカー8社の半期報告書によると、燃料車事業を完全に放棄したBYDは、上半期の純利益が前年同期比2倍以上に増え、昨年の通期利益を一気に上回った。また、1台当たりの粗利益は3.15万元(約63.8万円)近くとなり、自動車メーカーの統計で1位となった。ファーウェイとスマートEV(電気自動車)を共同開発している重慶金康賽力斯汽車(セレス)は、前年同期比約2.6倍の17億元(約344億円)超の純損失となり、依然として「赤字」の状態だが、認知を得るため宣伝を続けている。同じくファーウェイとスマートEVを共同開発している北汽藍谷新能源科技も1台あたりの粗利益はマイナスの状態で、1台当たりの売上総損失は9,000元(約18.2万円)以上となっている。

新エネルギー自動車産業チェーン全体を通じて、BYDは、収益力の面で寧徳時代や中国のリチウムメーカーである天斉鋰業との間に大きな差が出来ており、全体として、業界の利益はサプライチェーンの川上にシフトする傾向がある。

今年上半期の完成車メーカーの平均粗利率は10.27%、電池メーカーの平均粗利率は19.54%と前者を9.27ポイント上回り、エネルギー金属メーカーの平均粗利率は41.5%と完成車メーカーより31ポイント高くなった。また、天斉鋰業や塩湖提鋰などの企業は粗利率が84.26%以上にも達している。

全体的な背景としては、川上企業が産業チェーン全体から利益を「吸い上げている」ことが挙げられる。今年上半期のバッテリーグレードの炭酸リチウムの平均価格は、前年同期比 454%増の45.3万元(約 917 万円/トン)となった。バッテリーグレードの炭酸リチウムの平均価格は9月2日に49.74万元/トン(約1000万円/トン)に達し、50万元/トン(約1013万円/トン)に迫った。今年3月末、理想汽車のCEOである李想氏は「炭酸リチウムのコストは3万〜5万元(約60万〜100万円)ほどで、それほど高価ではなく採算が合う」と公言していた。現在、この矛盾を緩和するために、川下から川上、川上から川下への新エネルギー車産業チェーンの発展が一般的な傾向になっている。

(中国経済新聞)