大分県での講演会——中日関係の現状と今後

2022/06/29 12:29

自民党大分県支部から、「中日関係の現状と今後」とのテーマでの講演会を依頼された。
冷え込んでいる中国と日本の関係を考えれば、話もうまくいかないだろうと思い、ずいぶん迷ってしまった。
大分県議会の後藤慎太郎議員がわざわざ東京を訪れ、「今年は日中両国が国交を回復してちょうど50年。两国関係には様々な問題もあるが、民間交流を止めてしまったら50年の努力が水の泡になる」と説き伏せてくれた。
日本人がこれだけ努力している中、中国人として怠けるわけにはいかず、依頼を受け入れた。


講演会は6月10日の夜に、大分市で一番のホテルで行った。自民党大分県連の阿部会長ほか議員10数人も含め、合わせて300人以上が来場した。
会場に入るなり、何人かの温泉旅館の支配人から、「中国人観光客はいつごろ日本に来るのか」との質問を浴びせられた。
数十種類の温泉を抱え、国内最大の温泉リゾートである大分県。別府、由布院、九重高原などはまた国内有数の観光名所でもあり、コロナの前は中国や香港、台湾から毎年多くの観光客が訪れていた。

そこで、講演会のテーマを「中国経済の今後と大分県のビジネスチャンス」に変え、以下5つの内容について語った。
1.中国とはどういった国なのか
2.中国経済の現状
3.中国経済のこれからの取り組み
4.中日関係のこれまでの歩みと現実的課題
5.中国に関する大分県のビジネスチャンス
1時間余りの話は、熱心に聞いてくれたようだった。
その後で、主に以下の点についてかなりの質問を受けた。中国に対する日本人の関心事項が垣間見えるものである。
1.中国経済は今後も急成長を維持できるか。
2.中国の不動産市場は崩壊しないのか。
3.中国人観光客が最も期待している日本の商品は何か。
4.台湾との関係は今後どうなるのか。
5.中国はいつごろコロナが終息するのか。
6.日中関係はどうすれば改善できるのか。
これら一つ一つに答えた後で、以下のように話をまとめた。


50年に渡り 「世代友好」に努めてきた中日両国が今や、友好どころか「敵対関係」に変わりつつある。日本政府はいずれも大国である米中両国の間でバランスを保ち、どちらか一方に傾倒せず、「天秤にかけた」政策を行うよう強く願う。安全保障はアメリカ、経済は中国、などという二股志向は高望みであり、これでは日本は一段と深みにはまってしまう。世界でただ一つ5000年の歴史を誇り、独自の決まりや論理、そして目標を抱える中国を災難のように見るべきでない。日本国民も、中国をよく理解し、批判を抑えてほしい。
どの家にも言えない苦労があり、14億の人口を治めるのは大変なことである。好むと好まないとに関わらず、中日両国は引っ越せない隣近所の住民であり、お互い理解し真心をもって付き合わないことには、共存発展にはつながらない。
冷え込んでしまった両国関係であるが、今回の講演を通じて、日本にも友好や協力を願うぬくもりが存在していることを感じた。日本人も頑張って欲しい。そして中国人も頑張らなくては。


(中国経済新聞 編集長 徐静波)


【筆者】徐静波、中国浙江省生まれ。1992年来日、東海大学大学院に留学。2000年、アジア通信社を設立。翌年、「中国経済新聞」を創刊。2009年、中国語ニュースサイト「日本新聞網」を創刊。1997年から連続23年間、中国共産党全国大会、全人代を取材。中国第十三回全国政治協商会議特別招聘代表。2020年、日本政府から感謝状を贈られた。

 講演暦:経団連、日本商工会議所など。著書『株式会社中華人民共和国』、『2023年の中国』、『静観日本』、『日本人の活法』など。訳書『一勝九敗』(柳井正氏著)など多数。

 日本記者グラブ会員。