孫正義氏、中国の大手3社への投資がすべて失敗

2022/05/22 15:56

5月12日,ソフトバンクの創業者で社長である孫正義氏が東京で発表した2021年度の決算によると、3月31日の時点で1.7兆円(約628億元)の赤字計上であった。

ソフトバンクにとって過去最悪の結果であり、ベンチャー投資として最大の赤字額となっている。

大手各社が続々と過去最高の利益額を発表している中で、「一人負け」してしまった一番の理由は、投資の失敗である。

配下のソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)が2.64兆円(約1381億元)の赤字を出し、グループ全体の足を引っ張ってしまった。

中国では、孫氏は莫大な資金を投じたことで名が知られているゆえに、今回の赤字計上はかなりの話題になっている。

アリババの発足当初に2000万ドルを出資し、上場後に2000倍の利益をもたらすなど、創業者ジャック・マー氏の恩人とも言える孫氏は、この超大型取引により中国で大もてになった。去年8月には、SVFの投資の23%が中国向けと表明している。

ただ孫氏は、この案件以降は中国で目立った動きはなく、ここ数年間の中国でのソフトバンク投資案件は、いずれも痛手を蒙っている。

ソフトバンクの決算によると、SVFの赤字理由について、一期目は主にディーディー、Wework、Grabの3社から、また二期目はWework、京東物流、叮咚買菜が出どころとなっている。

赤字が大きかった投資先5社のうち、ディーディー、京東物流、叮咚買菜の3社は中国企業である。

ディーディーについて、ソフトバンクは2017年に80億ドルを投じ、同年9月には6.39億ドルでアリババよりディーディー出資分の株式5%を取得した。

ディーディーは2019年に、自動車のスマート走行や自動運転、部品などについて技術開発を手掛ける「上海ディーディー沃芽科技有限公司(ディーディー沃芽)」を全額出資で発足させ、ソフトバンクは2020年に再び5億ドルを投じている。

ディーディーに対して都合およそ120億ドルを投資したソフトバンクは、ディーディーの目論見書によると、出資率21%で筆頭株主となっている。

ソフトバンクにとってこの投資は、アリババに次ぐ華々しいものになるはずだった。ところが2021年6月30日、ディーディーがひそかにアメリカで上場したことが中国政府の逆鱗に触れたことから、悲劇が始まる。

ディーディーの株価は2021年にほぼ半減し、2022年にさらに約70%も落ち込んで、上場当初の最高値であった18元から10分の1に下がっている。現在のディーディーの時価は70億ドル前後まで減っており、ソフトバンクは出資率21%とすると、当初の120億ドルから15億ドル前後、つまり100億ドル以上も失っている。

京東物流も似たような状況である。

ソフトバンクは京東物流が上場する前に、一株40.36香港ドルで1.15億株を購入した。金額にして6億ドルである。そして2021年5月28日に香港で上場を果たし、株価は一時期18%を超え、時価は2700億香港ドルとなった。

それもつかの間、1か月後に下がり始めた株価は1年弱で14.94香港ドルに落ち、また時価は1000億以下となり、ソフトバンクは投資分の7割を失った。

叮咚買菜については、2021年5月12日にソフトバンクの単独出資で3.3億ドルのD+ラウンド融資を受けたと発表した。またアメリカSECに提出した20-F文書によると、ソフトバンクのSVF II Cortex Subcoの出資率は5.9%となっていた。

叮咚は2021年6月29日、一株23.5ドルでニューヨーク上場を果たし、株価はその翌営業日に62.84%上昇して38.3ドルとなり、時価は100億ドル近くに達した。この日、ソフトバンクの利益は50%増えた。しかしこれもつかの間で、叮咚はIT銘柄と同じような軌跡をたどり、年間で3割近く下落し、2022年以降さらに7割近くのダウンとなっている。

ソフトバンクを苦境に陥れているのは、これら3社だけではない。かつて2900倍もの利益をもたらしたアリババも、この1年間で株価が50%もダウンしている。

孫氏は中国で勝利を収め、中国で敗れた。敗北に至らしめたのは、やはり時の流れである。

IT企業への投資スキルを備えていた孫氏は、中国がどう歩もうとも2021年の相当の赤字は免れなかっただろう。

(中国経済新聞)